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まずはSaaSについて知っておこう
近年、クラウドという言葉を耳にする機会が増えましたが、クラウドとはインターネットに接続して必要なときに必要なだけサービスを利用できる仕組みのことを指します。クラウド・コンピューティングと呼ばれることもあり、このような仕組みで提供されるサービスをクラウドサービスと言います。また、クラウドは大きく「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の2種類に分けることが可能です。パブリッククラウドとは不特定多数の方に向けて提供されているオープンな形態のサービス、プライベートクラウドとは企業や組織が自社専用の環境を構築して社内やグループ企業へと提供する形態のことを指しますが、単にクラウドという場合はパブリッククラウドのことを指すのが一般的です。
なお、クラウド(Cloud)とは英語で雲を意味しますが、実際にクラウドを説明する際には雲のイラストや画像が用いられるのが一般的です。インターネット経由でサービスを利用するという仕組みがなぜクラウドと呼ばれるのかについては諸説ありますが、技術者がクラウドを説明する際に雲のイラストを利用していたことに由来するという説や、インターネットを雲に見立てて雲の向こう側にあるサービスを利用するというイメージによるという説などがあります。
クラウドサービスと一口に言っても様々な提供形態があるのですが、その中のひとつが「SaaS」です。
SaaSとは、「Software as a Service」の頭文字をとった略語で、日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と訳されます。読み方は「サース」もしくは「サーズ」で、これまでパッケージ製品として提供されていたソフトウェアをインターネット経由で利用できるようにした提供形態のことを指します。
代表的なサービスとしては、Microsoft Office 365などのオフィスソフト、GmailなどのWebメールなどが挙げられますが、SaaSではソフトウェアをパソコンにインストールすることなくサービスを利用することが可能です。加えて、インターネット上にデータを保存できる、マルチデバイスに対応している、複数人での利用ができるといった特徴もあります。
「Vertical SaaS」と「Horizontal SaaS」
また、SaaSは大きくVertical SaaSとHorizontal SaaSの2種類に分けられます。
Vertical SaaS
Vertical SaaSとは、特定の業界に特化して開発されたSaaSのことを指します。Verticalは垂直という意味で、その業界に必要な機能や使いやすさを深掘りしているのが特徴です。主に医療・不動産業・飲食業・建設業といった専門性が高い業界などで活用されていますが、開発には高い専門知識が必要なので老舗企業によって提供されているサービスが多いという特徴もあります。
Horizontal SaaS
これに対して、特定の業界や業種に特化せずに、汎用性が高いサービスとして提供されているのがHorizontal SaaSです。Horizontalは水平という意味で、職種を問わずビジネス全般に役に立つ機能が幅広く搭載されているのが特徴です。例えば、財務・会計システムや人事・給与システム、ビジネスチャット、プロジェクト管理などがHorizontal SaaSに該当しますが、一般的にSaaSと言う場合はこのHorizontal SaaSのことを指すケースが多いです。
「PaaS」と「IaaS」
なお、クラウドサービスにはSaaSだけでなく「PaaS」や「IaaS」といった提供形態もあります。
PaaS
PaaSは「Platform as a Service」の頭文字をとった略語で、読み方は「パース」または「パーズ」です。直訳すると「サービスとしてのプラットフォーム」となりますが、プラットフォームとはソフトウェアなどのプログラムを起動・動作させるための基盤となるもので、データベースやプログラム実行環境、OSなどが含まれます。アプリケーションの開発を行うためには、管理システムやOS、プログラミング言語などに合った開発環境を整える必要がありますが、PaaSを利用することで開発環境を整える手間がなくなるのでスムーズに開発を開始することが可能です。
IaaS
一方のIaaSは「Infrastructure as a Service」の頭文字をとった略語です。「イアース」や「アイアース」などと呼ばれており、日本語では「サービスとしてのインフラ」と訳されます。情報システムの稼働に必要となるネットワークや仮想サーバーといったインフラをサービスとして提供する形態のことで、サーバー・ストレージ・CPU・メモリといったインフラをクラウドサービスとして利用することが可能です。SaaSやPaaSと比べて自由度が非常に高く、ハードウェアのスペックやOSをユーザーが好きに選ぶことができますが、一方でユーザーが管理する範囲が広くなるので高い専門知識が必要になることに加えて、運用にかかる負担がSaaSやPaaSよりも高くなるという側面があります。
SaaS・PaaS・IaaSの違い
SaaS・PaaS・IaaSの大きな違いは、提供されるサービスの範囲にあります。システムの構築に必要なネットワークやサーバーが提供されるのがIaaSで、IaaSの内容に加えてOSやミドルウェア(OSとアプリケーション間の中間処理を行うソフトウェア)までが提供されるのがPaaSです。そして、ネットワーク・サーバー・OS・ミドルウェア・アプリケーションが包括的に提供されているのがSaaSとなります。
なお、SaaSと関連性が深く非常に似たものにASPと呼ばれるものがあります。ASPとは、Application Service Providerの頭文字をとった略語で、インターネットを経由して提供されるサービスや、そのサービスの提供事業者のことを指します。ASPの歴史は古く1980年代に誕生したと言われていますが、当時はインターネット回線が不安定であったことやセキュリティ面でも多くの課題があったため広く普及することはありませんでした。その後、ASPの欠点を改善したSaaSが2005年頃に登場したため、一般的にSaaSはASPの進化型として捉えられています。ただし、ASPはあくまでサービスの提供事業者のことであるため、ソフトウェアそのものを表すSaaSとは異なるものであるという意見もあります。
SaaSを利用するメリット
上記の通り、クラウドサービスには様々な提供形態がありますが、ここではSaaSを利用するメリットについて確認していきましょう。
SaaSを利用する4つのメリット
1.導入のハードルが低い
SaaSには様々なメリットがありますが、まず挙げられるのは導入のハードルが低いことです。SaaSはパッケージ型のソフトウェアのようにパソコンへのインストール作業が不要で、アカウントの取得後にすぐに利用を開始することができます。特に大人数での利用を想定している場合、パッケージ型のソフトウェアではインストール作業だけで膨大な時間がかかるケースも珍しくありませんが、インストールが不要なSaaSであれば導入までの期間を大幅に短縮することが可能です。加えて、サーバーなどのインフラを整えることなくサービスを利用できるので導入費用も抑えられます。パッケージ型と比べてソフトウェアの導入に要する手間や時間が少ないので、導入のハードルは非常に低いと言えるでしょう。なお、インストール作業が不要ということは、デバイス側のストレージ容量を圧迫しないということも意味しています。ストレージが小さいデバイスでも問題なく利用できますし、ストレージが圧迫されないのでデバイスの動作も安定するでしょう。
また、パッケージ型のソフトウェアの場合、最新バージョンへのアップデートやセキュリティ対策、サーバーのメンテナンスといった作業をユーザー側が行う必要がありますが、SaaSの場合はこれらの作業を全てベンダー側が請け負ってくれます。ソフトウェアの保守・管理に手間や費用がかかりませんし、常に最新のバージョンを利用できるのでセキュリティ対策も万全です。加えて、多くのSaaSでは従量課金制が採用されており、利用した分だけ料金を支払う仕組みとなっています。不要になったら解約できるという柔軟性も備えており、従業員の増減への対応が容易なので、コストの最適化が図りやすいというメリットもあります。そのため、SaaSは導入のハードルが低いだけでなく、運用もしやすいサービスと言えるでしょう。
2.マルチデバイスに対応している
マルチデバイスに対応しているのもSaaSのメリットのひとつです。SaaSでは、クライアントのアカウントごとのソフトウェアが提供される仕組みとなっているので、アカウントが同じであれば異なるデバイスからでも同じサービスを利用することができます。普段使っているパソコンとは異なるパソコンからサービスを利用できるのはもちろん、サービスによってはスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末から利用したり、WindowsやMacOSなどのOSをまたいで利用したりすることが可能で、パソコンを買い替えた場合などに再インストールをする必要もありません。
3.場所を問わずに利用することができる
加えて、SaaSはインターネット環境さえあれば場所を問わずに利用することができます。例えば、オフィスや自宅ではデスクトップパソコンで、外出先ではノートパソコンやスマートフォンで利用するといった使い方もできるので、ユーザーにとって利便性が非常に高いサービスと言えるでしょう。また、近年は働き方改革の推進や感染症対策の一環としてリモートワークへの需要が高まっていますが、場所を問わずにサービスを利用できるSaaSはリモートワークへの対応も容易です。なお、デバイスが異なっても同じソフトウェアを利用しているので使用感が変わるということはありません。
4.複数人で同一のデータを共有できる
ドキュメント編集機能とストレージ機能が搭載されたSaaSの場合は、複数人で同一のデータを共有できるという特徴もあります。単にデータの保存先が共有できるだけではなく、あるユーザーが行った編集が即座に他のユーザーのデータにも反映されるので、複数人での作業をリアルタイムに行うことが可能です。パッケージ型のソフトウェアでも、ファイルを送信して編集を行ってもらい、編集後のファイルを送り返してもらうという手順を踏めば共同編集は可能となりますが、この方法はリアルタイムでの作業とは言えません。タイムラグがほとんどない同時作業が実現できるのはSaaSの大きな特徴で、パッケージ型のソフトウェアよりもチームでの作業効率を高めることができます。
SaaSを利用する3つのデメリット
このように様々なメリットがあるSaaSですが、デメリットがないわけではないので注意が必要です。
1.カスタマイズの自由度が低い
SaaSのデメリットとしてまず挙げられるのは、カスタマイズの自由度が低いことです。SaaSでは、ベンダーが定めたルールの範囲内で運用するのが前提となっており、基本的にはサービスにもともと備わっていた機能のみを利用することになります。オプションで機能を追加できるサービスもありますが、自社での独自開発やパッケージ型のソフトウェアと比べるとカスタマイズできる範囲が限られています。そのため、サービスを選定する際は、自社にマッチする機能が搭載されているのか、どの程度のカスタマイズに対応しているのかといった点を十分に確認しておくことが大切です。
2.サービスの利用が制限される場合がある
加えて、サービスの利用が制限される場合があるというデメリットもあります。パッケージ型のソフトウェアの場合は、デバイスに問題が発生しない限りは使用し続けることができますが、SaaSの場合はベンダーがメンテナンスを実施していたりシステム障害が発生したりしている場合にサービスを利用することができません。また、インターネット環境がないとサービスが利用できないのもデメリットと言えるでしょう。
3.セキュリティリスクがある
さらに、セキュリティリスクがあるのもデメリットのひとつです。SaaSのセキュリティレベルは基本的には高いと言えますが、万全なセキュリティ対策が講じられているとは限りません。また、十分なセキュリティ対策が施されているサービスを選んだとしても、サービス利用時に使用するIDやパスワードが流出すれば第三者に不正アクセスされる恐れがあります。ユーザー側の不注意によって機密情報が外部へと流出する可能性があるため、IDやパスワードの管理方法などのルールを定めておく必要があります。データ流出などのトラブルは企業の信用を大きく失墜させることになるので、十分なセキュリティ対策が講じられているサービスを選ぶとともに、社内ルールの構築や整備を行うことが重要です。
仕事を進めるのに便利なSaaSサービス例
ここまでSaaSの概要とメリットについて解説してきましたが、ここでは仕事を進める上で便利なSaaSサービスを紹介していきます。
1.Dropbox
SaaSと一口に言っても様々なサービスがありますが、ビジネスシーンで活躍するサービスとしてまず挙げられるのは「Dropbox」です。Dropboxは、オンラインストレージサービスの一種で、Dropboxのフォルダに保存したファイルやデータは、保存した際のデバイスとは異なるパソコンやスマートフォン、タブレットなどからもアクセスすることができます。また、Dropboxでは「共有」ボタンをクリックすることで保存したファイルを他のユーザーと共有することが可能です。大容量のファイルでも簡単に共有することができるため、逐一データを送信する手間を省くことができます。
加えて、Dropboxではログインすることなく変更や新規作成したファイルが自動的にサーバーへとアップロードされる仕組みとなっています。サーバー上のファイルは常に最新の状態へと更新されるので、複数人で作業している場合でも常に最新のファイルを閲覧・編集することが可能です。さらに、Dropboxでは削除してしまったファイルでも一定期間内であれば復元することができるので、誤ってファイルを削除してしまった場合でも安心ですし、パソコンなどのデバイスが故障した場合でもデータがサーバー上に保存されているのでバックアップツールとして活用することもできます。
2.Google Workspace
次に紹介するSaaSサービスは、Google Workspace(旧称:G Suite)です。Google Workspaceは、Googleが提供しているグループウェアサービスで、GmailやGoogleカレンダーといった無償で利用できるツールがビジネス向けの要件に合うように強化されています。GmailやGoogleカレンダーなどのツールは、Googleアカウントを持っている方であれば誰でも無料で利用することができますが、同時にユーザー個人で全ての設定を行うことが可能です。そのため、無償提供されているツールをビジネスで利用した場合、従業員が機密情報を社外と共有したり、カレンダーの予定を全世界に公開したりする可能性があります。加えて、退職後に社内のデータにアクセスできる状況も生まれてしまいますが、Google Workspaceには管理者機能が備わっており、ユーザーごとにアクセス権限や公開設定を行うことができるので、上記のような事態を回避することが可能ですし、管理コンソールから従業員の利用状況を監視することもできるので、安全に運用することができるでしょう。
また、無償版と比べてGmailでは独自ドメインの設定がしやすく、カレンダーでは従業員同士での予定の共有が容易になります。Googleドライブではより大きなストレージ容量が利用できるようになるといったメリットもあります。さらに、Google Workspaceでは他サービスからの乗り換え時にデータ移行のサポートを利用できるので、スムーズに導入できるという特徴もあります。
3.Evernote
Evernoteは、多種多様な情報を記録できるメモアプリで、文字だけでなく画像や動画、位置情報などあらゆるデータを記録することが可能です。作成したメモはフォルダごとに分けて保存することが可能なので、仕事とプライベートで分けて利用するといった使い方もできます。また、Evernoteに保存されているメモには、それぞれ固有のリンクが割り振られており、そのリンクをメールなどで相手に送ることで簡単にメモの共有ができるという特徴もあります。加えて、Evernoteではノートやテキストを暗号化することも可能です。パスワードを知っている人以外が閲覧できない仕様に設定できるので、機密情報の漏洩リスクを軽減できます。
高度な検索機能が使えるのもEvernoteの特徴です。Evernoteでは、複数単語での検索も可能ですし、メモに割り振ったタグをもとにファイルを検索することもできます。タイトルや本文テキストを検索できるだけでなく、画像やPDF内のテキスト、Word・ExcelなどOffice形式のファイルに含まれる文字を検索することも可能です。PDFやOfficeファイル内のテキスト検索は有料プランのみ利用できる機能ですが、有料プランで契約しておけば保存したファイルが見つからないという心配がほとんどありません。その他にも、タスク管理としても活用できる、外部サービスとの連携が可能、丁寧なチュートリアルが用意されているといった特徴もあります。
4.Salesforce
最後に紹介するSaaSサービスは、Salesforceです。Salesforceは、セールスフォース・ドットコム社が提供しているSaaS型のツールで、営業支援(SFA)と顧客管理(CRM)としての機能が備わっています。具体的には、見込み客の発掘・顧客データ管理・売上管理・営業日報作成・営業活動管理・営業データ分析・予実管理といったSFAとしての機能や、請求書や見積書の作成・メール配信・電話対応・資料共有・社内SNSなどのCRMとしての機能が搭載されています。営業支援と顧客管理のどちらの機能も搭載されていることに加えて、コールセンター・マーケティング・AIの利用などの機能も標準搭載されていますし、直感的な操作性も備えているので誰でも簡単に扱うことが可能です。また、連携できる外部ツールの種類も豊富で、経理・会計システムやコミュニケーションツール、IP電話などとの連携ができます。
さらに、カスタマイズの柔軟性が高いのもSalesforceの特徴です。自社のビジネス形態に応じて必要な機能だけを選択して導入することができるので、無駄な機能に対して費用を支払う必要がありません。加えて、サポート体制も充実していますし、マルチデバイスにも対応しています。導入ハードルが低いSaaS型のサービスであるため、Salesforceは世界No.1のシェアを誇るSFA・CRMツールとなっており、業種や企業規模を問わず幅広い企業が利用しています。
コミュニケーションツールのSaaSサービス例
ここでは、SaaSサービスの中でも代表的なコミュニケーションツールを紹介していきます。ビジネスチャットなどのコミュニケーションツールは、電話やメールなどと比べて手軽にコミュニケーションできるとともに、複数人でのやり取りも容易にしてくれます。加えて、近年ではリモートワークを導入する企業も増えていますが、ビジネスチャットなどのツールはリモートワークで問題となりやすいコミュニケーション不足の解消にも非常に有効です。
1.Slack
代表的なコミュニケーションツールとして、まず挙げられるのは「Slack」です。Slackは、アメリカのSlack Technologies社が提供しているビジネスチャットツールで、世界150ヵ国以上で75万社を超える企業が利用しています。基本的なチャット機能に加えて、チャンネルと呼ばれるチャットルームを個人・部署・プロジェクト・顧客別などで自由に作成できるので、やり取りが混在する心配がありません。加えて、メッセージを知らせる通知の条件をチャンネルごとに設定することができるという特徴もあります。また、過去のメッセージを閲覧することもできますし、送信者・チャンネル・投稿時期・キーワードでの絞り込み検索にも対応しているので過去のメッセージが探しやすいというメリットがあります。
多種多様な外部サービスと連携できるのもSlackの特徴のひとつです。Slackは、2021年3月時点で2,200を超える外部サービスと連携することが可能となっており、DropboxやSkype、Twitterといった外部サービスと連携させることで業務の効率化を図ることが可能となっています。さらに、Slackはチャットツールではありますが、音声通話やビデオ通話にも対応しています。無料プランでは1対1のやり取りしかできませんが、有料プランであれば複数人での通話が可能です。基本的にSlackがあればビジネス上のコミュニケーションが全て完結するので、会議ツールなどを別途導入する必要はありません。
その他にも、ドラッグ&ドロップで簡単にファイルをアップロードできる、チャンネルごとにアップロードしたファイルを一覧表示できる、プログラミングコードを投稿できるsnippet機能が備わっているためITエンジニアにとって非常に使いやすくいといった特徴もあります。なお、Slackにはフリー・プロ・ビジネスプラス・Enterprise Gridという4つの料金プランがあり、プランをアップグレードすることでより多彩な機能が利用できるとともに、サポート体制が充実していきます。
2.Chatwork
次にご紹介するSaaS型のコミュニケーションツールは「Chatwork」です。Chatworkは、日本のChatwork株式会社が提供している国内利用者数No.1のビジネスツールで、32万社を超える企業が利用しています。1対1のやり取りができるダイレクトチャットや複数人でのコミュニケーションができるグループチャットという基本的なチャット機能に加えて、マイチャットという機能が使えるのがChatworkの特徴です。マイチャットは、自分だけが見ることができるチャットで、メモを残したりファイル置き場として利用したりすることが可能です。
タスク管理機能も搭載されており、自分やメンバーのタスクを作成することができます。タスク一覧も期限などで細かく表示させることができるので、タスク漏れのリスクを軽減することが可能です。また、ビジネスチャットツールの多くはファイル共有機能を備えていますが、Chatworkはチャット上部のアイコンをクリックするだけで過去のファイルを一覧表示させることができるため、過去のファイルを簡単に見つけることができます。
加えて、Chatworkはシンプルな機能と分かりやすい操作性が特徴のビジネスチャットツールとなっています。ITスキルが高くない方でも簡単に利用することができるので、導入時の教育コストの削減が可能です。さらに、純国産のビジネスチャットツールで、機能やサポートも日本語に対応しているので安心して利用できるというメリットもあります。なお、料金プランはフリー・ビジネス・エンタープライズの3種類で、ビジネスは1ユーザーあたり月額500円(年間契約)、エンタープライズは1ユーザーあたり月額800円(年間契約)で利用できます。
3.LINE WORKS
最後に紹介するコミュニケーションツールは、「LINE WORKS」です。スマートフォンやタブレット、パソコンなどで利用できるメッセージアプリである「LINE」のビジネス版で、スタンプが利用できるなどLINEと使い勝手がほとんど変わりません。LINEは多くの方が利用しているメッセージアプリで、ほとんどの方が直感的に使うことができるため、ITスキルが高くない方でも簡単に利用することができるでしょう。また、掲示板・カレンダー・アドレス帳・アンケート・Driveといった仕事向けの機能も備えていますし、最大200名までの音声通話・ビデオ通話が可能です。
社外のLINE WORKSユーザーや、一般のLINEユーザーとのやり取りができる外部トーク連携という機能が搭載されているのも特徴のひとつです。一般のLINEユーザーとのやり取りが可能なので、顧客や内定者、アルバイト・パートといったLINE WORKSのユーザーでない方とも直接連絡することができます。
さらに、スマートフォンなどのモバイル端末での使い勝手が非常に良いのもLINE WORKSの特徴です。ビジネスチャットツールの中にはスマートフォンやタブレットで利用できるものも少なくありませんが、多くのツールは基本的にはパソコンで利用することを前提に設計されています。しかし、LINE WORKSはスマートフォンでの利便性を重視した設計となっているので、現場仕事が多い企業に適したコミュニケーションツールと言えるでしょう。料金プランはフリー・ライト・ベーシック・プレミアムの4種類で、1ユーザーあたりの月額費用(年間契約)はライトが400円、ベーシックが500円、プレミアムが1,000円となっています。
会計ソフトのSaaSサービス例
最後に、主なSaaS型の会計ソフトを紹介していきます。会計ソフトは、正確性とスピードの両立が求められる会計業務の負担を軽減してくれるシステムですが、同時に法改正にも対応していく必要もあります。パッケージ型のソフトの場合は法改正のたびにソフトを買い替える必要がありますが、SaaS型の会計ソフトであれば常に最新版を利用できるので、法改正のたびに新しいバージョンのソフトを買う必要がなく、法改正へとスピーディに対応することが可能です。
1.弥生会計オンライン
代表的なSaaS型の会計ソフトとしては、まず「弥生会計オンライン」が挙げられます。弥生会計オンラインは、弥生株式会社が提供しているSaaS型の会計ソフトで、2021年5月時点で11,000以上の会計事務所から推奨されています。弥生会計にはデスクトップ版もありますが、弥生会計オンラインはデスクトップ版から会計機能のみが抽出されています。デスクトップ版の弥生会計に搭載されている部門管理や経営分析などのサポート機能は利用できませんが、取引の取り込み・入力、会計帳簿・決算書・レポートの作成といったシンプルな機能のみで構成されているので、デスクトップ版よりも使いやすいというメリットがあります。加えて、簿記や会計の知識がない方でも使える機能と画面設計となっていますし、サポート体制も充実しておりメールや電話などでの操作サポートに加えて、仕訳や経理業務に関する相談をすることも可能です。
また、取引の取り込み・入力では、レシートや領収書などをスキャナやスマートフォンのカメラで取り込めるとともに、取り込まれたデータは自動仕訳されるので、入力と仕訳の手間を省くことができます。複雑になりがちな会計業務を簡単に処理することができるため、弥生会計オンラインを導入することで業務の効率化を図ることが可能です。料金プラン(2021年11月時点)はセルフプランとベーシックプランの2種類で、全ての機能が使えるセルフプランは初年度が無料、次年度からは年間26,000円(税抜)となっています。全ての機能に加えて充実したサポートが受けられるベーシックプランは、初年度が年間15,000円(税抜)、次年度からは年間30,000円(税抜)となっています。
2.マネーフォワードクラウド会計
次に紹介するのは、「マネーフォワードクラウド会計」です。マネーフォワードクラウド会計は、会計業務にかかる負担を約半分に削減できる会計ソフトで、中小企業から上場企業まで幅広い企業が利用しています。銀行・クレジットカード・電子マネー・POSレジなど3,000以上の様々なサービスと連携することが可能で、連携したサービスの取引データは自動的にマネーフォワードクラウド会計へと取り込まれます。これによりデータ入力の手間を大幅に削減できるため、業務の効率化を図ることが可能です。
加えて、マネーフォワードクラウド会計は自動仕訳にも対応しており、連携したサービスの取引データに対応する勘定科目を自動で提案してくれます。しかも、この自動仕訳は人工知能(AI)が担っているため、使えば使うほど自動仕訳の精度が向上していくという特徴があり、自動仕訳の精度が向上するほど会計業務の負担が軽減されていきます。また、請求書作成・経費精算・給与計算・勤怠管理・マイナンバー管理・各種レポート作成といった機能も搭載されているので経理業務全体が効率化されますし、金融機関レベルのセキュリティレベルを誇る会計ソフトなので安心して利用することが可能です。料金プランは、スモールビジネスとビジネスの2種類で、料金はスモールビジネスは年間契約で月額2,980円、ビジネスは年間契約で月額4,980円となっています。なお、マネーフォワードクラウド会計料金は2022年6月に料金体系の一部が改定される予定となっているので、これから導入する場合は注意が必要です。
3.freee
最後に紹介するSaaS型の会計ソフトは「freee」です。freeeは、バックオフィスのリモート化を実現してくれる会計ソフトで、個人事業主から中規模法人までに対応しています。4,000以上のサービスと連携でき、連携したネットバンキングやクレジットカードなどから明細を自動取得することが可能です。そして、あらかじめ設定しておいた仕訳ルールやAIの推測に基づいて自動記帳してくれるので、会計業務の負担軽減を実現できます。加えて、請求書作成や経費精算、決算書の作成などにも対応していますし、別サービスとなる人事労務freeeと連携すると、人事労務freeeで作成した給与明細データが会計ソフトfreeeへと自動的に取り込まれて仕訳まで行ってくれるので、転記作業が不要になります。
また、個人事業主の方の場合は、スマートフォンを使って簡単な質問に答えるだけで確定申告に必要な書類を作成することが可能です。青色申告・白色申告のどちらにも対応していますし、パソコンを使えばfreee上から電子申告することもできます。さらに、利便性が高いユーザーインターフェースが採用されているとともに、電話・メール・チャットによるサポート体制も充実しているので、経理初心者でも使いやすいシステムと言えるでしょう。
なお、freeeには個人事業主向けと法人向けの料金プランがあり、個人事業主向けのプランはスターター・スタンダード・プレミアムの3種類、法人向けプランはミニマム・ベーシックの2種類が提供されています。各プランの月額費用は年間契約の場合、スターターが980円・スタンダードが1,980円・プレミアムが3,316円、ミニマムが1,980円・ベーシックは3,980円となっています。また、ベーシックプランを選択した場合は、おまかせパックという追加オプションを付けることも可能です。このオプションを付けると、freee活用に関する資格試験に合格した上で導入実績を積んだ経理担当者が付き、ソフト導入から毎日の経理業務までを一任することができます。初期費用として200,000円(税別)がかかるとともに、月額で29,000円の追加料金も発生しますが、新たな経理担当者を雇用する必要がなく、経理やfreeeについての専門知識を持つ方に経理業務を任せることができます。
- 「しちてんはっき」何度転んでも挫けずに起き上がる。焦らないで!自分らしく! 自分のペースでチャンスを掴め!!
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