経営戦略・ビジョンの提示

DXを推進するためには、経営トップによる明確なビジョンの提示が必要不可欠です。ただ単純に世の中の流れによってDXを進めると言うだけでは、具体的な進め方のイメージが社内に浸透せず、単純にデジタル技術を導入しただけに終わってしまうことが多いので十分に注意をしなければなりません。しかし、実際には経営トップでもデジタル技術と言う言葉に惑わされてしまい、具体的にどのように進めれば良いのかがわからないと言うことも多いものです。

経営トップが意識しなければならない事

DXを進める上で経営トップが意識しなければならない事は、今後想定される様々な世の中の変革に対して、自らの事業をどのように対応させていくかと言う点です。これはDX化の有無にかかわらず、企業の経営者が常に意識しなければならないことであり、そのための明確な経営戦略を打ち出すことが重要です。またこの際に様々な状況を想定し、これに対応するためにはいくつかの戦略を準備しておかなければなりません。

経営戦略を考える上で多くの経営者が誤りやすいのは、自らの企業にとって都合の良い様々な事象を前提に、その戦略を打ち出してしまうことです。現在の市場環境は様々な小さな要因によって大きく変化する非常に危うい面を持っているため、いくつかの想定をもとに様々な変化に対して順応できる要素を準備しておくことが重要となります。これは市場環境だけでなく、様々な政治情勢の急激な変化によっても起こり得ることであるため、これに順応する社内の体制を整えることが、経営戦略を考える上で重要な要素となっています。

これらの明確な経営戦略を立案した上で、そのためにDXを効果的に利用すると言う発想が重要となります。

DXを効率的に業務を行うツールと捉え、これを自らの経営戦略に当てはめていくことが効果的な利用につながると同時に、具体的な社内への適応をよりわかりやすく示すことになるのです。

企業の経営トップは、様々な企業の活動の全てに責任を持たなければなりません。最近では様々な業務を並行して行いその効率化を図ろうとする企業が非常に増えていますが、その一つ一つに対して経営トップが細かな判断をする事は難しいため、権限委譲をすることがより効率的にビジネスを進める手法であると認識されています。そのため様々な判断をそれぞれの担当者や責任者に丸投げすると言う風潮が非常に強まっており、DXの導入に関してもそのような体制で行うと言うことが多くなっているのが実態です。もちろんその際に責任者と推進プロジェクトなどの体制を立案し進める事は非常に重要ですが、その結果や問題点を経営トップが逐一把握し、必要に応じて適切な判断を示すことが大切です。また様々なタイミングで適切にビジョンの提示を行うことが経営者に課せられた責任でもあるため、これを的確に果たすことがDX導入を成功させるキーポイントになっています。

メリットとデメリットを十分に理解することも重要

経済産業省ではDXガイドラインを発表しその導入の手法や目的を詳細に解説しており、その内容を十分に把握し咀嚼する事は経営者にとって非常に重要なこととなります。しかしその一方で、デジタル技術を導入することによるメリットとデメリットを十分に理解することも重要です。経済産業省のDXガイドラインでは様々なメリットばかりが歌われていることが多いのですが、実際にはDX化を行うことによって企業によっては現場に多大な負荷を与えてしまうことも少なくありません。かつて様々な企業がIT化の導入のもとでこれまでのレガシーシステムを効率的なWebシステムに変更した際には、多くのベンダーが共通的な要素を持ち込み、これによってその操作性が大きく変化してしまうと言うことがありました。ベンダーは管理側の負荷を軽減することに注力し、データを入力したり、そのための調査を行う現場の負荷を増大させることにつながったと言う例があります。多くの経営トップはこのような実例を十分に理解し、DX化においては現場の負荷増大を十分に意識しながら進めることが必要です。現場の負荷が大きくなる事は総合的に業務の効率が低下することにつながり、システムの可用性や対応力が強化された場合であっても、総合的にデメリットが生まれてしまうことが少なくありません。この点も経営トップは十分に意識をし、自らの業務に照らし合わせて最適な判断をすることが重要となります。
企業経営を行う上で重要なポイントは、常に様々な状況に対し迅速に判断できる情報を集めておくことです。そのためにはまず明確な経営戦略やビジョンの提示を行い、これに対して具体的な進め方をそれぞれの担当責任者に立案させることが重要です。そのアイディアを経営トップ自らが判断し、最終的な進め方の具体的なビジョンを社内に浸透させることが必要となります。よく行われるのは経済産業省のDXガイドラインに従って進め形の立案を担当者に提示させると言う方法ですが、これでは経営トップの考えが社内のDXに反映されず、本来の経営戦略と大きくかけ離れたものになってしまう恐れがあります。この点には十分に注意をする必要があり、逐一確認や修正、及び経営戦略との照らし合わせなどを行っておくことが重要なポイントとなっています。

この件は経営トップが自ら行う必要があり、担当者に丸投げするなどと言うことがあってはなりません。

経営トップが示すことが重要なポイント

経済産業省がDXガイドラインを提示したことで、DXは多くの企業で導入ありきと考えられていることが少なくありません。しかしその導入にあたっては企業の将来の活動や経営戦略と十分に照らし合わせたうえで、効果的な導入を行うことが必要となります。すなわち、ガイドラインに記載されているすべての仕組みを導入しようとするのではなく、あくまでも経営戦略に則った利用を行うことが重要です。今後想定される様々な状況にDXで対応すると言う考え方ではなく、その対応は全て経営戦略の中で行うことが必要です。その経営戦略を安定的に遂行させ、また業務効率化や対応力を高めるための技術にDXを利用すると言う考え方が重要であり、その利用方法を具体的に経営トップが示すことが、スムーズに導入を行うポイントとなっています。

 

経営トップのコミットメント

DXを導入する上で最も重要な事は、経営トップのコミットメントです。DX化によって様々な企業の風土や仕事の進め方、もしくは根本的な構造などが大きな変化を受け入れなければならないことも少なくありません。そのため、これらの影響を経営トップ自身が的確に判断し、またこれを受け入れる意識を持つことが重要なポイントとなります。

共通認識を持って進めることが重要

DX推進を行う場合に陥りがちなケースが、推進部門にその検討や導入の方法の立案を丸投げすることで、経営トップ自身がその意識を十分に含めないケースです。この場合には経営トップ自身がDX推進を行う上でブレーキとなってしまうことがあるため、注意をしなければなりません。あくまでも推進部門のビジョンを前向きに検討し、その上で必要な要素を常にコミットメントしながら、共通認識を持って進めることが重要となります。

企業のトップが意識しなければならない事は、DX推進を行うことによるメリットのほかに、その推進を行わないことによるデメリットを十分に認識することです。推進部門は具体的な手法を検討することがその業務となるため、様々なメリットを取り入れながらその導入計画を立案することが使命となり、具体的なデメリット等は十分に検討しないことが少なくありません。またこのデメリットを意識してしまうと推進自体が進まないことになってしまうため、世の中の時流に乗り遅れてしまうことになります。

経済産業省がガイドラインでDXの推進を積極的に行う姿勢を発表したことで、多くの企業がその推進に乗り出していると言う実態があります。そのためこれを行わない企業はその活動を進める上で様々なリスクを背負うことになりかねず、事業分野によってはその継続性が危ぶまれてしまうと言うことも少なくありません。そのため早急に進めなければならないと経営トップが意識することが多く、その具体的な手法を踏まえて推進部門に丸投げしてしまうことが多いものです。しかしこれでは単純に導入をするための検討となってしまい、実際に導入後の様々なデメリットが検証されずに業務効率化が低下するといった事態を招くことも少なくありません。そのような事態に陥った時に、その責任を経営トップが負わなければいけないことはもちろんですが、企業の事業継続性を損なってしまった場合にはそれだけでは済まない様々な問題が生じてしまうことも多いものです。

DX化を進める上では現在の企業活動のバランスを常に確認しながら、周辺環境を踏まえてその検討と推進を迅速に行う必要があります。また推進を行う上では自らの企業活動を効率的に行うことを最優先に考慮することが必要です。これらのバランスを常に確認しながら進めるためには、様々な状況を総合的に確認し、明確な意思表示を示す経営トップの存在が非常に重要となっています。

経営トップは最適な手法を選んで判断することが必要

DXを導入することで企業が得られるメリットは非常に大きなものがあり、そのために迅速にスムーズに導入をしたいと言うケースは少なくありません。またDX推進を早急に行わないと、世の中の流れに乗り遅れてしまい、市場競争力を失ってしまうと言う懸念を持つことも多いものです。しかしその反面単純にデジタル1ニュースを導入することに目を奪われてしまい、本来の自らの事業のスタイルを見失ってしまうのでは本末転倒です。経営トップは常にこのことを意識し、様々な検討結果の中から最適な手法を選んで判断することが必要となるのです。

近年では様々なデジタル技術が世の中に浸透しており、その利便性が多くの人に認められるようになってきました。実際に業務を進める上で、既にその技術を利用していると言うところも少なくありません。顧客管理や品質管理の面で効率的なシステムを導入していると言う企業も多く、また最先端のWebテクノロジーを導入することで社内の情報共有をスムーズに行っていると言うところも多いものです。このような仕組みを既に導入しているのだから、DX化もスムーズに進むはずと考えている経営者は多いものですが、これらの導入は従来のIT技術の社内利用の結果であるため、DX推進とは全く異なる要素であることに充分注意が必要です。あくまでもDX推進は自らの企業の明確な経営戦略が前提となっており、その経営戦略をスムーズに進めるためのテクノロジーであることを意識することが必要となります。

経営トップは現場の協力を仰ぐことも重要なポイント

DX推進を行うことで顧客からの評判やロイヤルティ、及び顧客維持率が向上することが統計的に示されていますが、これはあくまでも統計的な結果であり自らの企業にこれが当てはまると言う確証はありません。そのため、導入することによるリスクやそのメリットなどを経営トップが明確に示すことが必要であり、推進部門を含め現場の理解を十分に得ることが重要です。また生産性が向上したり、コスト削減が効率的に行うことができるなどの結果が報告されていますが、これらも必ずしもすべての企業に当てはまると言うものでは無いものです。この点を十分に踏まえた上で、様々な問題を十分に検討し、それでも進める必要があると言う明確な判断を経営トップが行うことが必要です。具体的な推進を行う上で、現場への影響が発生する事は避けられないものであり、これを事前に経営トップが十分に認識した上で、最終的なメリットを提示し現場の協力を仰ぐことも重要なポイントです。

様々なシステム導入の検討はこれまで多くの企業で検討部門が隅々までチェックをし、その結果を持って経営トップが判断をすると言う仕組みは一般的に行われてきました。そのため、最終的な導入判断は、トップが行うにしても、その詳細を理解していない経営者が多かったのが実態です。しかしDX推進は企業の事業継続性に影響を与える重要なものであるため、その検討に経営トップがしっかりと関わることが重要です。その上で明確な導入ビジョンを打ち出し、現場にたいして十分な説明を行った上で進めることが必要となります。スムーズにDX新を進めるためには経営トップのコミットメントが非常に重要である理由は、推進によって様々な部門が受ける影響を事前に十分に浸透させ、これに対して向き合っていく姿勢を明確に示すことにもつながります。

 

DX推進のための体制整備

DX推進を行う上では、全社的な取り組みの中で最大限の効果を上げることができるよう、十分な体制を整えることが必要です。現在の業務のあり方に大きな影響を及ぼすものでもあるため、経営トップの明確なビジョンの提示とコミットメントが必要となる事はもちろん、その成果に対する評価なども明確にしておくことが重要となります。

DX推進における問題点は、特に現場のビジネスの進め方に対して大きな影響を与えてしまうことです。かつてシステムのデジタル化をIT化のもとで進めてきた企業にとっては、従来通り様々なシステムを見直しこれをデジタルシステムに置き換えれば良いと言う印象を持っているところも多いのですが、DXはこのような単純なものではありません。様々な市場環境に対し柔軟に対応することができる企業の業務スタイルをデジタル技術の恩恵を利用して大幅に組み替えるものであるため、非常に大きな影響を企業全体に及ぼすものです。経営トップはこの点を十分に意識し、その体制を考慮することが必要となります。かつて社内のIT化の場合には現場の運用部門をそのまま検討部門に置き換えることも多く、最もよく社内システムを理解している立場であることからスムーズに進むと言う発想が多いものでした。実際に運用部門がIT化の検討を行うことのメリットも非常に多く、様々なシステムの細かな部分を把握していることから事前に発生するトラブルを予測し、これに対する対処方法を立案することができたことが大きなメリットとなっています。しかしDX推進の場合には全く異なるシステムに現場のビジネスプロセスを置き換えると言う非常に重要な作業となるため、現在の運用部門が片手間でできる業務ではありません。さらに業務プロセス自身に大きな影響を及ぼす面もあり、システム運用部門だけでは解決できない問題も数多く生まれる可能性があるのです。

DX推進のための体制整備に関わる問題点

DX推進を行う上では、通常のプロジェクト遂行とは異なり、様々な問題が生じることが想定されています。その1つは、推進の効果が出るまでに多くの時間がかかると言うことです。

1.推進の効果が出るまでに多くの時間がかかる

DXを導入することで様々なメリットが企業に生まれる事は経済産業省が提唱するガイドラインの中でも詳細に示されており、そのため多くの経営者は積極的に導入をしようと考えることが少なくありません。しかし具体的に推進部門を設立した場合、そのメンバーは業務を行うことによって生まれる成果により評価されるため、なかなか結果が出ないプロジェクトに対しては積極的に取り組もうとはしないものです。そのモチベーションを維持するために、明確な評価指標を経営トップが示すことが必要です。通常のプロジェクトであれば実際に業務を行うことで目に見えてその成果がわかることが多く、自分自身で納得しモチベーションを高めながら進めることができるのですが、DX推進の場合にはその成果が簡単に現れることが期待できないため、そのモチベーションが低下しがちです。これを経営トップが様々なマイルストンを設置し、そのタイミングで明確に評価をすることが重要となっています。

2.現場の負担が大きい

2つ目は、レガシーシステムを刷新することによる現場の負担が大きいことです。推進部門は様々なレガシーシステムをより効率的なものに変革しようと尽力しますが、これに対して現場の反発が大きくなることも少なくありません。現場から見た場合には現場をスムーズに進めることができる業務を大きく変更せざるをえなくなり、場合によってはそのプロセスが大きく変化するため多大な負担を被ることになります。この現場の負荷を増大させると言うデメリットに対し、経営トップが十分に現場に対して説明を行うことが重要です。同時に推進部門に対して十分なバックアップを行うことも必要となっており、信頼関係を構築しながら進める体制を整えることが必要となっています。

加えてレガシーシステムを刷新する場合の計画が長期化することが予測されるため、その計画を明確にしながらスムーズに移行するための手段を十分に検討することも重要です。システムトラブルや顧客への影響が発生する場合もあるため、これを未然に防ぐための様々な準備を行うことが必要となります。これらの作業も数年にわたることが多く、推進メンバーのモチベーションが低下することが予測されるため、この点にも十分に配慮をしなければなりません。

3.人材の確保が必要になる

3つ目は、DX推進を行う上で適切な人材の確保が必要になると言うことです。多くの企業ではIT担当者やシステム管理者等が存在しており、企業システムの運用管理を行う人材が揃っていることが多いものです。しかし彼らは日常の業務に追われていることが多く、これらのシステムを刷新し新たなビジョンのもとでシステムを構築すると言う余力はありません。そのため新たにDX推進に特化したIT技術者を任命する必要がありますが、彼らは現状のシステムの詳細を知らないと言うことが多く、そのための教育なども必要になります。

加えて近年では多くの企業がこぞってDX推進を行っていることから、外部からその人材を雇用しようとしても、なかなか見つからないと言う実態があり、その確保に苦慮することが多いものです。その人材の確保の方法を事前に十分に検討し、適切に確保しておくことが、DX推進を効果的に行う上で重要な要素となっています。

明確な体制整備のビジョンを示すことが重要

DX推進を行うためにはこれまで多くの企業が経験してきた、現場のレガシーシステムを新たなIT技術を利用してより利用しやすいものに変えると言うものではないため、多くの検討とその方針の立案が重要なポイントとなります。業務自身を変革することにつながるものであることから、推進部門の責任も非常に大きなものとなる事は言うまでもありません。しかし企業がその事業を円滑に継続して行く上では必要不可欠なものとなっているため、時間をかけてもスムーズに確実に進めていくことが重要となります。この面でも体制整備は非常に重要な要素となっており、その人材を確保する事は簡単なことではありません。経営トップはこの点を十分に認識した上で、明確な体制整備のビジョンを示すことが重要となります。

 

投資等の意思決定のあり方の確認

DX推進は企業の今後の活動を占う重要なプロジェクトであるため、その投資の意思決定も一般的なプロジェクトとは異なる側面を意識し考慮しなければなりません。単純にコストだけではなくビジネス全体に対するインパクトを十分に考慮し判断することが必要となります。また長期的なプロジェクトになることが予測されることから、企業の様々な収支のバランスを考慮しながら適切な投資の判断を行うことも必要です。目先の利益にとらわれて効率的なチャレンジを阻害することのないよう、経営トップが十分に配慮しながらその意思決定を行うことが重要です。

経営トップのDX投資における重要な考え方

1.DX導入はそれ自身が利益を生むものでは無い

DX導入にあたっては、様々なメリットが生まれることが予測されています。顧客からの評判や固定客の維持率が向上すると言うメリットがあり、特にDXを導入することによって企業イメージが刷新され、顧客のロイヤルティが向上することが期待できます。しかしこの顧客に対するインパクトはすぐに結果が現れるものではありません。注目をする顧客が増える事はすぐに利益につながるものではなく、その注目を利用して効果的な商品をいち早く市場に投入することでメリットを享受することができるようになるものです。DXはそのきっかけを生み出し、タイミングを効果的に利用するために必要不可欠なものですが、それ自身が利益を生むものでは無いことを十分に意識することが重要です。

企業の生産性が向上することも、DXでは注目されている要素です。少子高齢化を迎え新たな若手の働き手がなかなか集まらない現在の環境においては、人手不足を解消する有効な手段とDXが注目されている面が少なくありません。しかしDXの導入がすぐに人手不足の解消に結びつくと言うものではなく、これも様々な商品のコストや生産性が向上して初めて目に見えるものとなります。同様にその他の要素もすぐに結果が生まれるものではなく、DXを導入したことによる様々な効果によって、実際の企業活動が恩恵を受けることで初めて結果が表れるものであることを認識することが必要です。経営トップはこの意識を常に持ち、長期的なビジョンのもとで投資に関する意思決定を行うことが必要となっています。

2.一般的なプロジェクトとは異なる投資の考え方をすることが重要

現在は長く続く不景気により、多くの企業が目先の利益を追求すると言うことが少なくありません。そのため結果の出ないプロジェクトに対しては早急にその出資を打ち切り、他の有益なプロジェクトに資金を回そうとすることが一般的となっています。企業の限られたリソースを効率的に生かすためにはその判断は決して誤りでは無いのですが、DXを効果的に推進するためには長期的なビジョンに立ちその出資計画を明確にすることが重要です。そのため経営トップは一般的なプロジェクトとは異なる投資の考え方をすることが重要であり、そのために十分な検討を事前に行っておかなければなりません。

3.経営戦略との整合性が非常に重要なポイント

DXの導入を推進するためには、様々な情報の収集が必要不可欠です。経済産業省がDX推進のビジョンをガイドラインにより明確に示していることから、多くの企業がガイドラインに従って早急にその実現を図ろうとする傾向にありますが、単純にガイドラインに従っているだけでは企業の本来の出資計画から大きくかけ離れてしまい、金銭的なリスクを大きくする場合が少なくありません。そのため経営トップはDX推進にあたって様々な金銭的な検討を事前に行うことが重要となっており、これを十分に行うことが必要となります。これを確実に実現するために、経営戦略との整合性が非常に重要なポイントとなっています。

適切な投資に関する意思決定が経営トップに求められる

企業の経営戦略は長期的なビジョンに立って様々な事業を実現する計画であり、同時にこれを推進するための資金計画や様々なリスク排除の方策などを合わせて検討するものです。DXは単純にデジタル技術の導入を行うと言うものではなく、企業の業務改革そのものであると言う認識を持つことが重要です。その導入の効果をあらかじめ経営戦略の中に盛り込むことが重要であると同時に、中長期的な視点から企業が安定的にその活動を行うための戦略を立案しなければなりません。その経営戦略を推進する上でDXを組み込む仕組みを立案し、そのための資金を計画的に提供することが必要となるのです。この点を十分に認識した上で、投資などの意思決定を行うことが、DX推進における経営トップが求められる意思決定の基本的な考え方となります。

しかし同時に長期的な投資が必要である反面、無駄な投資を避けなければいけないことも事実です。DX推進を行う際には長期的な計画のもとで行う必要があるため、その中にはすぐにその成果が見えないと言う問題があることも忘れてはなりません。そのために成果が生まれない無駄な出資となってしまうことも十分に考えられますが、この点は経営トップが柔軟に判断することが必要となります。DX推進のためにかけた投資がすべてその成果に結びつくと言うものではなく、その中には無駄な投資になってしまうと言うものも少なくありません。そのリスクを含めて十分に検討を行い、その意思決定を行った場合にはリスクも含めて全て経営トップが責任をおうと言う覚悟も必要となります。

DXを推進する事は企業にとって必ずしもメリットばかりではありません。多額の資金を投入することでより大きな成果を得られるとは必ずしも限らないため、推進部門等との密接なコミュニケーションが重要となります。同時に常に客観的な判断を行うことも重要であり、目先の成果に惑わされない長期的なビジョンを持つことが必要不可欠となります。これらはDX推進を行う上でその目的となる経営戦略が確立されていれば決して難しいものではなく、容易に判断できる内容となることが多いものです。中長期的な経営戦略の実現のためにDX推進が必要であり、そのために必要な投資を惜しまないことが経営者に求められる考え方となりますが、その上で極力無駄な投資をしないようにすることも重要なポイントです。これらの総合的な判断を常に行いながら、推進部門の様々な挑戦を妨げないような適切な投資に関する意思決定を行うことが、DX推進を進める上で経営トップに求められるものとなっています。