SaaSの種類別サービス例、成功・失敗事例まとめ

そもそもSaaSとは?

ウェブサイトの中でもECサイトを構築する際に耳にすることが多いのが、SaaSやPaaS、IaaSなどのIT専門用語です。SaaSやPaaS、IaaSは、いずれも何らかの略語だと分かるけれども、それぞれにどのような違いがあるのか正式な名称(略語になる前の言葉)を知らない人も多いでしょうし、これらがクラウドサービスに関連する言葉であることを知っていても、それぞれ明確な違いが分からない人も多いかもしれませんね。今回は、そもそもSaaSは何を意味するのか、メリットやデメリットも含め分かりやすく解説することにしましょう。

SaaSは、Software as a Serviceの略語で、略語の呼び方は「サース」や「サーズ」です。ベンダーが提供する、インターネットを通じてクラウドサーバーに構築されたソフトウェアを利用者に提供するサービスです。ちなみに、SaaSの概要を聞いた際にASP(Application Service Provider)を連想される人も多いかと思われますが、ASPはサービスを提供している事業者もしくはビジネスモデルを意味するもので、SaaSは提供されるソフトウェアなどの位置付けになるものです。

 

SaaSの特徴

Googleのスライドやスプレッドシート、ドキュメントなどはSaaSの魅力を生かしたサービスで、これらはブラウザ上で複数の人々が同時に編集できるメリットを持つサービスです。SaaSの特徴には、インターネット環境があればどのような場所からでもアクセスが可能になることと複数のチームや複数の人数などの環境下で編集や管理ができます。

1.インターネット環境があれば、どこからでもアクセスを可能にする特徴について。

SaaSのソフトウェアは、クライアントのアカウントごとに提供されているもので、フィスだけでなく自宅もしくは外出先などからアクセスを可能にする、パソコンやスマートフォンなど利用するデバイスが異なっていてもアカウントが同一のものであれば同一のサービスを利用できるため在宅ワークなどのような働き方でも大きな影響を与えているサービスです。会社の中で使っているパソコンがデスクトップタイプ、週末自宅で仕事をするためにこれをその都度運ぶことは大変です。ノートパソコンが自宅にある、もしくは仕事に使えるようなパソコンが家にあるとき、会社で使っているパソコンと同じような感覚でソフトウェアを使える、これもSaaSの特徴の一つといえます。

 

2.複数のチームや複数の人々で、編集および管理ができる特徴について。

SaaSにはドキュメント編集機能やストレージ機能が搭載されているものもあるのですが、これらは複数のチームや複数のユーザーが同時にデータの編集と管理ができるメリットがあります。一つのファイルを社内のメンバー同士で共有を行い同時に管理や編集ができるメリットはパッケージ型のソフトウェアにはないメリットであり、SaaSに注目が集まっている理由の一つになっています。

 

SaaSのメリットとデメリット

このようなメリットがあるSaaSですが、他にもいろいろなメリットがありますし中にはデメリットもあるのでしっかり理解しておきましょう。SaaSのメリットには、ソフトウェアの開発が不要で導入コストが安い、ユーザー側の管理が不要でランニングコストが安い、2つのメリットがあり、ソフトウェアのカスタマイズ自由度が低いデメリットが存在します。

1.ソフトウェアの開発が不要で、導入コストが安いメリット。

SaaSは、クラウドサーバーのソフトウェアを使うのが特徴などからもソフトウェアの開発は必要ありませんので、開発費用や導入への準備期間を短縮できる、結果的に導入コストを大幅に抑えることが可能です。仮に、従業員の増減が多い際にもアカウントの増減だけで対応ができるので、パッケージ型ソフトウェアのように料金を支払うものと比較した場合でもコストの無駄を省けます。パッケージ型のソフトウェアの多くが1ライセンスですから、従業員の増員に伴い新しいライセンスを購入することになり、ライセンスは1年や3年などの更新型になるので従業員が減るとコストに無駄が生じる可能性があるわけです。

2.ユーザー側の管理が不要で、ランニングコストが安いメリット。

パッケージ型のソフトウェアや自社開発を行ったソフトウェアを使っている場合、最新バージョンへの更新およびセキュリティ対策は利用ユーザー側が行う必要があります。これに対して、SaaSはサービスを提供するベンダー側がバージョンアップやセキュリティ対策を講じているためソフトウェアそのものの管理に対する手間がかかりません。これにより、ランニングコストを抑える効果を期待できます。

3.ソフトウェアのカスタマイズ自由度が低い、デメリット。

SaaSにはいろいろなメリットがあるけれども、ソフトウェアの機能が限定されるデメリットは存在します。ソフトウェアのカスタマイズには基本的な制約があるので、ベンダー側が提供している以上のサービスは存在しません。そのため、自社業務に最適なサービスがなければ別のサービスを探したり、提供されているサービスに合うよう運用もしくは業務手法などを変更しなければならないケースもゼロではありません。

このように、SaaSはインターネットを介して利用できるソフトウェアを意味するもので、クラウド型タイプのSaaSはクラウドサービスと呼ばれることもありますし、ソフトウェアの基盤はベンダー側が管理をするので各自のパソコンにソフトウェアのインストールは不要です。これにより、自宅と会社で使うパソコンなどデバイスが異なる場合でも同一のソフトウェアを使い作業ができるメリットがあるわけです。ベンダーは、ソフトウェアを提供する会社のことを意味していてベンダーごとに特徴的なSaaSを提供していますので、自社業務にマッチするものを比較しながら導入を検討されると良いでしょう。また、30日間無料など体験版を用意している提供会社も多くあるので、体験版を通じて使いやすさや自社の業務に合うSaaSであるのか確認してから本採用する方法もおすすめです。

 

SaaSで提供されるシステム例

働き方改革やコロナ渦の影響による在宅ワークなど、ここ数年で様々なSaaSが登場していますが普段から何気にSaaSを使っている人も多いのではないでしょうか。例えば、LINEやGoogleドライブなどは代表的なSaaSです。

SaaSの代表的なシステム例

1.Googleドライブ

Googleドライブはモバイルデバイスやタブレット、パソコンなどからファイルやフォルダを保存して共有や共同編集ができる、全てのコンテンツに対して簡単にかつ安全にアクセスができるメリットを持つSaaSです。安全性についてですが、ドライブのファイルへのアクセスは暗号化されるため保護状態になる、共有されているファイルは予防的なスキャンを行いマルウェアやスパム、ランサムウェアやフィッシングが検索された際には削除されます。ドライブはクラウドネイティブであり、ファイルをローカーディスクなどに保存する必要がないので、デバイスに対するウィルスなどのリスクを最小限に抑えることも可能です。

Googleドライブは、ドキュメントやスプレッドシート、スライドやクラウドネイティブアプリなどとシームレスに連携を行う機能があり、チーム内でのリアルタイムの共同編集を行うことができるようになります。スプレッドシートは、Googleが提供している表計算ソフトです。表計算ソフトと聞くとExcelをイメージされる人も多いかと思われますが、一般的なExcelはパソコンにソフトウェアをインストールして使用する形になります。これに対し、Googleドライブのスプレッドシートはインストールせずにインターネットを介して利用できることや共同編集ができるなどの強みがあります。LINEやGoogleドライブ以外にも、SaaSで提供されるシステム例についていくつか種類ごとに紹介することにしましょう。

2.Slack

Slackは、豊富な機能およびシンプル操作が魅力のビジネスチャットです。メールと比べると手軽にメッセージの送受信ができる、このような魅力がビジネスチャットにあります。Slackの場合は、プロジェクトごとにチャットルームを立ち上げてメッセージの送受信ができる機能を持ちます。チャットルームは社内だけでなく社外のメンバーを招待する形でメッセージのやり取りができますので、協力会社やフリーランスなど共同プロジェクトに活用することも可能にします。Slackはテキストチャットだけでなくビデオ通話にも対応しているので、ウェブカメラやマイクを用意しておけば遠隔地とのコミュニケーションを図りたいときや、言葉だけでは伝えにくい話題など映像を使ったりして説明ができるので、伝えやすさにも効果を期待できるのではないでしょうか。

3.Zoom

ZoomはWeb会議用のSaaSとして定評がありますが、1対1のWeb会議はもちろん、複数のメンバーで音声通話やビデオ通話などを可能にします。Zoomは、新しい生活様式の普及により広まったSaaSで、最大1,000人のWeb会議を開催することができる、会議内容の録音や録画、AIロボットを使った自動文字起こしなどの機能もあるため議事録を作成する際の工数削減にも効果を期待できます。Zoomには専用アプリが用意されているのですが、専用アプリがない場合でもブラウザを使ってWeb会議に参加ができるのも魅力の一つです。

文字起こし、これはテープなどに記録されている音声を文章化する作業の総称です。翻訳会社などが文字起こしのサービスを提供していることが多いのですが、会議内容を録音してあるメディアを翻訳会社に提供すると、その内容を聞き取りながら文章にしてくれます。特に、英語などでの会議内容を日本語に翻訳して文書にしたいときなど利用されるケースが多いサービスです。Zoomでは、AIロボットが文字起こしをする機能があり英語での内容は英文で文書化されるので日本語に訳すときには、そのデータを翻訳会社に提供すればAIロボットでは難しい文字起こしも適切な形で修正して日本語にして貰うこともできます。

4.kintone

kintoneは、20,000社の導入実績を持つグループウェアです。スケジュール管理やメッセージの送受信、社内報などの機能が一つになっているSaaSがグループウェアであり、kintoneはスケジュール管理や基本機能、CRM/SFAや交通費申請、勤怠管理などの便利機能があるのが特徴です。1つのSaaSで、30を超える機能を搭載しておりそれぞれの機能はアプリで提供されることからも、各部署や職種ごとに必要なアプリだけをインストールしてスマートフォンやタブレット端末などから利用することも可能にします。

CRMは、カスタマーリレーションシップマネージメントの略語で、顧客関係管理や顧客管理などの意味を持ちます。CRMは、顧客を中心に考えながらビジネスを展開して利益の最大化を図るマネジメント手法でもあり、顧客との良好な関係を構築することを目的にしています。

SFAは、セールスフォーオートメーションの略語で、営業支援システムなどの意味があります。営業を支援する手法や支援するためのツールを指し営業が商談を始めてから受注に至るまでの進捗状況を可視化する、その活動の管理を行うことができるツールです。

従業員エンゲージメントの向上に役立てることができるTHANKS GIFTは、社内ソーシャルネットワークサービスです。社内報やメッセンジャーなどの機能を一つにまとめたもので、従業員同士が感謝し合い褒め合える風土を構築することを目的にしたもの、これがTHANKS GIFTの特徴といいます。社内報やチャットなどのような基本的な機能だけでなく、従業員同士で感謝を伝え合うサンクスカード、貰ったカードに応じてポイントを集めることができる社内通貨など、遊び心もあるSaaSといえましょう。

5.Asana

Asanaは、プロジェクトおよびタスク管理のSaaSです。ビジネスが複雑化して、スピードが求められる現代において欠かすことができないのがプロジェクト/タスク管理ツールです。Asanaは、プロジェクトを把握しながら一つ一つのタスクに対して丁寧に管理ができる、メンバーはそれぞれが自分にとって見やすいプロジェクトビューを選んで効率的に業務を管理できるなどの特徴があり、情報共有・タスクの割り当て・期限設定などのようなルーチン作業を自動化させることもできます。

SaaS導入の成功事例

予定の管理や共有を効率化したいときに便利なのがスケジュール管理ツール、一覧性が高いデザインや直感的な操作を可能にするスケジュール管理ツールともいえるのがGoogleカレンダーです。しかも、GoogleカレンダーはGoogleアカウントがあれば誰もが無料で使える魅力がありますし、いつ・誰が・どこに行くのか、これを直感的に把握することが可能になる、日ごとのスケジュールを時間表形式で確認できるので細かなスケジュールの一元管理にも最適です。Googleマップと連携を行えば予定の場所を登録することもできるなど、Googleのサービスをフル活用できる魅力も大きいといえます。

Googleカレンダーの導入における成功事例を、一つご紹介することにしましょう。導入を行った会社は、ウェブサイトの企画から制作、そして運用や保守を行いインタラクティブコンテンツや映像などの企画・制作、コミュニケーション戦略立案、セールスプロモーションやイベントの企画・制作、広告キャンペーン企画など宣伝業務全般をワンストップで手掛けている独立系制作会社です。この会社が、Googleカレンダーを活用したことで業務効率化ツールの方で様々な使い方を工夫している、全社の共有ツールの予約やアルバイトスタッフのシフト管理などで役立てています。

Googleカレンダー導入前の問題点

1.障害が頻繁に発生してしまったためその対応に追い回され続けていた

従来は、サーバーやソフトウェアなどの情報システムを使用する側が管理を行っている施設内に機器を設置して運用するオンプレミスでファイルサーバーやメールサーバーを数台設置して運用していた、運用においては非常に苦労し続けていたようです。特に、障害が頻繁に発生してしまったためその対応に追い回され続けていた、中でもスパムメールの対応に至っては業務時間の1割は取られていたようにも感じられるほど、かなりの労力を使っていたことが伺えます。

2.メールサーバーがダウンする

メールアドレスのローカル部分は社員の名前がそのまま使用されていて、役員は名前が表に出やすいのでメールボックスには毎日のように大量のスパムメールが送信されていた状況、クライアントから業務上データ量が大きな画像ファイルも大量に送信されるなどメールサーバーがダウンすることも少なくなかったといいます。メールサーバーがダウンすると業務上重大な支障をきたすことになるなど、障害が起きたときには真夜中でも駆けつけ対応に追われていた、システム担当者は1人だけなので休日でもプライベートの遠出はできないなど常にストレスを感じる日々を送っていたそうです。

この企業のシステム担当者は役員のポストに就いている人物、以前からGmailやGoogleカレンダーなどのユーザーで、2010年の春にGoogle Workspaceの存在を知った、これはクラウドのASPサービスの形で利用することができるためサーバーの管理そのものが不要になる、当時社内ではサイボウズをカレンダーとして使っていたけれども、これはGoogleカレンダーで代用できる、スパムフィルダーも万全などから導入を検討し始めた、このような経緯があります。支払いはまとめて年1度ではなく月次払いになるので中小企業には魅力的であり、試用期間を利用して使い勝手の良さを確認することになりました。Googleカレンダーを含めGoogleは信頼性や将来性において間違いがないはず、このような理由から他のプロダクトを比較検討することなく正式に導入されました。

Googleカレンダーの導入メリット

1.一元管理ができる

最初に利用を始めたのは、GmailとGoogleカレンダー、その後GoogleグループやGoogleドライブ、Google+やGoogle+ハングアウトおよびアプリケーションといった具合に活用の幅を広げた、中でもGmailとGoogleカレンダーの組み合わせは操作性に優れていることを実感できたといいます。従来メールとカレンダーは別々に操作をしなければならなかったけれども、Google Workspaceでは1つのシステム内に相互連携を可能にする機能があるため、カレンダーに記載されている予定がメールで自動的に配信されるなどの利便性を兼ね備えています。

会議室の予約や自転車、検証用端末など会社内の共有ルーツの管理もGoogleカレンダーで行う、それぞれのカレンダーを設定して予約状況の一覧や予約の入力ができるよう工夫を行うなどのアイディアも見受けられます。これに加えてGoogleカレンダーでは、アルバイトのシフト管理にも活用している、一元管理ができるメリットは大きく誰が何時に来るのか事前に把握ができるため各自が手伝って貰いたい仕事を予約できるなどのメリットに繋げることができます。Googleドライブには一般的な書類だけでなく、全スタッフの座席表を共有している、これは座席の変更が頻繁に行われる関係から全員が入力可能なGoogleドライブは非常に便利な存在です。Google+は、業務の参考になりそうな情報共有で活用しているといいますが、Google+とはソーシャルネットワーキングサービスで、サークル・Sparks・ビデオチャットルーム・位置情報・インスタントアップロード・グループチャットなどの機能を持ちます。

2.効率化できる

電車などで移動していると電話での通話が難しい状況になりますし、メールを送っても返信までの時間が長くなると困るときなどはテキストチャットならいつでもできます。テキストチャットなら、電話番号やメールアドレスなどを伝えたいとき非常に便利、導入以来スタッフ全員が1年中多用しているなど導入の成功に繋がるコメントを見ることもできます。

ここに効率化が見られるけれども、Googleカレンダーなどの導入によりトータル的な効率化は大きなものへと変化している、導入した会社は広告代理店に常駐しているスタッフも多くいる、遠方の自宅で業務を行っている従業員もいるなど、Google Workspaceを使うことでどのような場所にいてもアクセス可能です。本社同一環境を共有できるなど、SaaSの中でも信頼性が高く導入がしやすいGoogleカレンダーなどのサービスにおける導入成功事例です。なお、導入した企業は、取引先の広告代理店やクライアントなどがアジア諸国に進出する可能性も高い、仮に海外に進出したとしてもGoogle Workspaceはそのまま使えるので安心、このような評価もあります。

SaaS導入の失敗事例

SaaSは、ベストプラクティスで運用することを前提で設計されているツール、自社独自のやり方に執着すればするほど導入による効果は遠のくともいいます。ベストプラクティスは、ある結果を得るために最も効率の良い技法や手法、プロセスや活動などの意味を持つ言葉で、SaaS導入を成功に導くためには失敗事例を知ることも大切です。導入して失敗してしまう、このようなケースで多いのが従業員への周知が不十分であり導入そのものの目的を達成できないケース、運用ルールを決めていなかったので利用する側でもある従業員にとって使い勝手が悪いツールになってしまったケース、あまりにも機能が多くあったので逆に使いにくいツールになってしまった、このような失敗事例が存在します。

SaaS導入のよくある3つの失敗事例

1.従業員への周知が不十分

従業員への周知が不十分、これは上長以上の役所者だけが実際に利用するスタッフの意見を聞くことなく勝手に導入を行い、それを使い今後は管理や運用を始めて欲しい、このような一方的な足り方では下にいるスタッフは何をどのようにすべきか分からない状態に陥りやすくなります。そもそもSaaSを導入する目的がどのようなことで、その目的を達成するのにはどのようなSaaSを導入しなければならないのか基本から考えることがポイントです。利用するのは従業員ですから、それぞれの意見に耳を傾けるなどは基本的なことです。

経営層などトップによる強いコミットメントおよび情報発信は、SaaSを成功に導くためのポイントの一つです。導入において、今までのやり方を大きく変えなければならない、これは現場にとっては当然ながら大きな痛みを伴うものとなりがちです。導入を検討している段階では現場からの反対意見も出るでしょうし、個々のカスタマイズの要望が出ることもあるわけです。これらに対し、経営層などが毅然な態度でこれまでの業務の進め方は踏襲しない、SaaSに合わせて最適化したやり蚊帳を構築するなど強いメッセージを発信し続ける必要があります。これは、情報システムなどのような部門担当者が主導するものでなく運用プロセスを一から再構築するトップダウンの会社全体としてのプロジェクトとして取り組むことが求められます。

最初から完璧にすることを考えるのではなく、導入した後も短期間のスパンの中で改善サイクルを実行できるようしなければその方向性は悪い方向に向いてしまう、やがて導入したSaaSは従業員誰一人も使わなくなるリスクも出て来ます。改善サイクルを実行できるようにするためには、中長期を見据えながら効果を出すといった考え方が欠かせません。導入直後は、以前とは運用方法が異なるので現場にいる従業員は手戻りが発生することもあるでしょうし、慣れない作業を負担に感じてしまう従業員も出て来るなど従業員に対しての周知と導入目的を明確にした上で検討を始めることがポイントです。

2.導入後も継続して改善しつづける

導入前には考えもしなかったことが多く発生することもあり、これを対応しなければならない場面も増えて来ます。このような段階で別のSaaSを検討する方法もあるのではないかなど考える人もいるかと思われますが、改善サイクルは必ずといって必要になるもので、導入前には想定していなかったことに対する対応を耐えながら運用して行く、これを半年や1年など続けることで徐々にその効果が生じて来るようになります。SaaSは、導入することが目的ではありません。あくまでも、SaaSをしっかり活用して効率化を図ることが目的になるわけですから、入後も継続して改善することは必須です。これを理解しておかなければ、どのように素晴らしい機能を持つSaaSでも効率化を図れない、導入においての失敗事例になりかねないわけです。

3.運用ルールを明確に定めていない

運用ルールを定めていなかったので、従業員にとって使いにくいものになる、これも失敗事例で多く見受けられる要因です。運用ルールは、文字通りSaaSを使うことで業務の正確さや効率化を図るために欠かすことができないもの、各々の考えの下で異なる方法で利用しているのでは本来の効率化を望むことができなくなる、ルールを決めた上で全従業員が同じやり方で運用を行うことで業務の効率化に繋げることができるわけです。既存の運用ルールおよび仕組みを大幅に見直すことは厭わないこと、システムそのものが変わるのだからルールも変わって当然、このように考えがちではあるけれども多くの組織はルールを変えることなくシステムだけを変えようとするケースが多くみられます。導入するだけで社内の運用が効率化される、これはある意味幻想的なものでありシステムを導入すると同時にルールの見直しも行わなければ効率化の効果は期待ができないものになってしまうわけです。

SaaS導入の失敗事例からわかること

SaaS導入の失敗事例の中には、会社内のコミュニケーションを活性化させると同時に従業員のエンゲージメントを高める目的で社内SNSを導入したものがあります。ここでも目的は、社内のコミュニケーションを活性化させることと従業員のエンゲージメントを向上させるといった2つがあるわけですが、社内SNSを導入することで社内でのコミュニケーションが高まるであろうといった期待があるけれども、最終的な目的になる従業員のエンゲージメントの向上を図るもしくは達成させるためには運用ルールおよび従業員に対する周知徹底が必要不可欠です。これを行わずに導入してもSaaS本来の機能を活かすことができない、単なるメッセージ送受信のための共通ツールになってしまう、このような失敗事例を持つ企業は多いといわれています。

SaaSの導入失敗事例では、選択したSaaSが自社の効率化の目的に最適なものではなかった、他のサービスを使えば成功になったなど選択そのものによる失敗ではありません。SaaSを含めた技術というのは魔法の杖ではなく、導入するだけで社内運用が効率化されるわけではない、このような錯覚から失敗に繋がっているなどの共通点があるようです。成功事例の中では導入するだけでなく業務のルールを工夫したり導入後に悪い分は改善するなど、随時ルールの見直しや改善を行いながら成功に導いているのが特徴です。

SaaSは導入事例をチェックし、自社に合ったものを選ぼう

SaaSを使いバックオフィスを大きく変えて業務を効率化させるのか、それともこれまでのやり方にこだわりSaaSによる効率化の恩恵を得ることができないままでいるのか、これを決めるのはトップであり上層部による主導できるのか否かで決まるといっても過言ではありません。ボトムアップから大きな変化を起こすことはかなりハードルが高いもの、トップ層がSaaSを導入することに満足することなく社内のルールを変更するなどコミットした会社の場合はSaaSを導入して成功に導いています。SaaSに機能はもちろん重要なものではあるけれども、このような便利機能を活かすか否かは組織マネジメントであることを把握しておく必要があります。

SaaSは、業務の効率化やコスト削減など導入することで得られるメリットが色々あるわけですが、他にはどのようなメリットがあるのか導入する前に押さえておきましょう。SaaSのメリットには、インストール型のソフトウェアにはない導入のハードルが低い点が挙げられます。SaaSの料金体系は、サブスクリプションと呼ぶ月額制で導入の際にまとまった費用がかからないのが基本です。これに加えて30日間などのような無料お試し期間が設けてある製品が多いので、使用感や機能性など納得したものを導入できるのも魅力といえましょう。

 

SaaSの運用および保守

SaaSの運用および保守は、サービス提供会社でもあるベンダー側が行いますので自社内に物理的なサーバーの設置および管理、セキュリティ更新やサーバーの保守などの運用コストがかからないので、運用および保守の負担が軽減できるメリットもあります。サーバーの管理となると知識や技術を持つスタッフが必要になって来ますが、インストール型のソフトウェアからSaaSに切り替えれば専門スタッフは要りませんし、運用や保守などにかけていたコストを削減する効果も期待ができるわけです。

在宅ワークが増えている現代において、多様な働き方に役立てることができるのもSaaSのメリットの一つです。SaaSはインターネット環境があればいつでも利用できるソフトウェアであること、パソコンはもちろん、タブレットやスマートフォンなどでも利用できるソフトウェアが多くあるのでオフィスだけでなく、自宅や図書館などの場所や出張時の宿泊先や移動中の電車の中など必要なときいつでもアクセスして仕事ができるメリットもあるわけです。

運用や保守の負担軽減、多様な働き方の推進などのメリットは業務の効率化に繋がる部分ですし、大半のSaaSは業務の効率化を重要視して設計が行われていますし、中にはAIロボットを活用して業務を自動化できるものもあるなど従来人がやらなければできない作業の量を軽減できるメリットもあります。企業や組織内の目的や目標を達成するために欠かせないルールや仕組みを整えて正しく運用すること、これは内部統制と呼ばれるものでSaaSは内部統制の強化に役立てることもできます。内部統制が正しく行われていないと、目標を達成させるのに時間を要してしまったり不正が蔓延する可能性も高まります。アカウントごとの権限を詳細に設定できたり、申請から承認までのワークフォローを適正化させて効率的に運用できます。このような機能を持つSaaSを上手に使えばより少ない負担の中で内部統制を強化させることも可能にします。

SaaSを導入する上で考えておくべきことは、社内の課題を明確にすること、導入目的を明確にすること、運用ルールを決めること、この3つです。

社内の課題を明確にする、これは解決しなければならない課題をはっきりさせなければどのようなSaaSを選択すべきか、そもそもSaaSを導入すべきか分からない部分です。バックオフィスではない社員が事務作業や雑部に多くに時間を取られている、このような課題があるとき、この課題を深堀りしたところ交通費や旅費などの申請に要する時間が多くかかっていることが分かり、掘り下げて行くと申請フローが煩雑であり大半の従業員が月末にまとめて作業をしていることが分かったとします。このようなときに役立つ存在になってくれるのは、経費などの申請をスマートフォンなどでその場でできるSaaSがあれば課題を解決に導いてくれます。

 

SaaSの導入目的を明確にしよう

SaaSの導入目的は、必ずしも課題の解決とは限りませんが、どのような目的があるのか考えておくことが大切です。ペーパーレス化を進めたい、さらに効率的に仕事ができるようにしたい、コスト削減を図りたいなど色々な目的が考えられるわけです。このようなSaaSを導入したいと考えたときには、何故導入したいのかを考えることが大切、コスト削減を目的にしているのであれば利用人数当たりの利用菌を重視しなければなりませんし、一部の業務を自動化できればその分の人数を削減できる、他の仕事のために人員を配備することも可能にします。

どのようなSaaSを導入するのか決まった段階で、導入前に運用ルールを決めることが大切です。ただ、運用ルールを決めても従業員がそれを守らないのではSaaSの機能や効果を最大限に活用することは難しくなります。導入したものの使用していない場合や運用ルールが形骸化したなど、導入の失敗事例も多くあります。運用ルールを決める際にはベンダーの担当者に相談するのも一つの方法、製品の中には伴走支援を売りにしているものも多くあるので、どのようにすれば課題を解決できるのか導入前から運用まで専任担当者がサポートしてくれます。

このように、SaaSを導入する上では社内の課題および導入目的を明確にすること、運用ルールを決めることの3つを考えておく必要がありますが、ここまでできた段階で導入事例を利用して自社に合うものを選ぶやり方がおすすめです。導入事例には製品の特長だけでなくその製品を選んだ経緯などが必ず説明の中に明記されています。成功に導いている企業は、3つのポイントを順番に考えて自社に合ったSaaSを導入していますので自社内で考えたことと類似しているものを使えば導入したことでのメリットを生かすことができるようになるわけです。

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